執筆:福光潤 公開:2019/02/27 コメント(1件) |
邦題
ビール・ストリートの恋人たち
ふりがな
びーるすとりーとのこいびとたち
英題
If Beale Street Could Talk
発音
いfビーおすとぅRィー(とぅ)クっ(どぅ)トーく
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意味
If | Beale Street | Could | Talk |
↓ | ↓ | ↓ | ↓ |
もし~
だったとしたら | ビールストリート
(ブルース音楽で有名な米国メンフィス市の通り) | できた | 話す、口をきく |
⇒ もしもビールストリートが口をきけたのなら……
⇒ 詳しい英語解説は後半のコラムへ
作品
- 2018年/アメリカ/映画/ロマンス、ヒューマン、冤罪、差別
- 製作・監督・脚本:バリー・ジェンキンズ(Barry Jenkins)
- 原作:ジェームズ・ボールドウィン(James Baldwin)著『ビール・ストリートに口あらば(If Beale Street Could Talk)』(1974年、短編小説)
- 出演:キキ・レイン(KiKi Layne)、ステファン・ジェームズ(Stephan James)、レジーナ・キング(Regina King)
- 第91回アカデミー賞助演女優賞受賞!(レジーナ・キング)
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コラム
- 邦題『ビール・ストリートの恋人たち』という意訳は、ロマンス映画でよく見かける「○○の恋人たち」というパターンです。
一方、原作小説(同原題)は、『ビール・ストリートに口あらば』という邦題に直訳されています。直訳とはいっても、英題『If Beale Street Could Talk』に含まれている仮定法が文語調で素敵に訳出されていますね。
- ところで「仮定法」と聞いてアレルギー反応を起こしていませんか? 本作品の英題で、仮定法の基礎を覚えてしまいましょう!
- 仮定法現在
中学校で習う「条件を示すif節」を含む文です。未来の事柄だけど未確定なので、if節内では現在形(下記例文の「rains」)を使用。
§例文:
If it rains tomorrow, I'll stay at home.
もし明日雨だったら家にいるね。
- 仮定法過去
こちらは高校で習います。今回の英題『If Beale Street Could Talk』は、現在の事柄だけど事実じゃない(「street」は「talk」できない)ので、if節内では過去形(下記例文の「could talk」)を使用。
§例文:
If Beale Street could talk, I would ask something about this town.
もしビールストリートが話せるのなら、この街について質問したいことがある。
- 仮定法過去完了
同様に、過去の事柄が事実でない条件の場合は、if節内で過去完了形(下記例文の「had had」)を使います。
§例文:
If I had had money then, I could have bought this car.
もしそのとき金を持っていたのなら、この車を買えていたのになぁ。
- 仮定法現在
以上をまとめると、
仮定法とは、事実に反することを仮定条件として述べることであり、if節内の時制をひとつ巻き戻すこと。となります。
仮定法とは、事実に反することを仮定条件として述べることであり、if節内の時制をひとつ巻き戻すこと。となります。
- 原作著者のジェームズ・ボールドウィンによれば、英題『If Beale Street Could Talk』は、ブルースの父と呼ばれたW. C. ハンディ(W. C. Handy)の楽曲『ビール・ストリート・ブルース(Beale Street Blues)』(1916年)の歌詞に由来しているとのこと。
♪歌詞引用
If Beale Street could talk If Beale Street could talk,
Married men would have to take their beds and walk
Except one or two, who never drink booze
And the blind man on the corner who sings the Beale Street Blues.
「Beale Street」という無生物主語に対して動詞「talk」が使われています(擬人法)。「Beale Streetが話せるのなら」ということは、つまり「Beale Streetが人間だったのなら」ということ。ここでは「Beale Street」を女性にたとえて、既婚男性なら誰でも彼女と禁断の恋に落ちるぜ(素面と盲目ブルースマンは除く)、と歌われています。
- そんな「Beale Street」とは、アメリカ合衆国のテネシー州(Tennessee)メンフィス市(Memphis)にある、ブルース音楽で有名なストリートです。
もともと「Beale Street(ビール・ストリート、ビール通り)」は、正式には「Beale Avenue(ビール・アヴェニュー、ビール街)」でした。ところが、上記楽曲『ビール・ストリート・ブルース』が数々のミュージシャンにカバーされて有名になったため、名称変更を余儀なくされたそうです(Norman Cohen著『American Folk Songs: A Regional Encyclopedia』 P. 278)。
また、Wikipediaによれば、1841年に「忘れられた英雄的軍人」に因んで命名されたストリートであるとのこと。
他に英語圏で有名な「ビール」姓の人物として、イギリスの婦人教育・参政権運動家「ドロシア・ビール(Dorothea Beale)」さんがいらっしゃいます。
※ちなみに「うまいんだな、これがっ」の「ビール」は「beer」です、念のため(笑)
- 最後に本作のあらすじ。
19歳のティシュ(Tish)は、無実のレイプ容疑で逮捕されてしまった婚約者のフォニー(Fonny)のために、そして生まれてくる赤ん坊のために、家族や弁護士と協力して彼の無実を証明しようと奮闘する。そんなニューヨーク(とプエルトリコ)を舞台としたストーリーです。
場所としての「Beale Street」自体は登場しませんが、映画の冒頭でジェームズ・ボールドウィンの原作小説から
ビール・ストリートは黒人のレガシーだ等の引用が映し出されます。
その他にも、なぜこの作品に『If Beale Street Could Talk』というタイトルが付けられたのか? 仮定法のニュアンス、元ネタの歌詞内容、そしてビールストリートやメンフィス市の歴史などをふまえて、各自で映画をご覧になって考えてみてくださいね!
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