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そして誰もいなくなった

タイトル英語ビデオ

執筆:福光潤
公開:2016/12/02
コメント(2件)
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邦題

そして誰もいなくなった

  • 別名:死人島(1939年)

ふりがな

そしてだれもいなくなった

  • 別名:しにんとう

英題

And Then There Were None

  • 別名:Ten Little Niggers(1939年)
  • 別名:Ten Little Indians(1964年)

発音

あん£ェん£ェrをrナん

英語例文へ 視聴ヘルプ 発音ヘルプ

意味

And Then There Were None
↓ ↓ ↓ ↓
そして それから ~は存在した 誰も~ない
そして、その後 誰も存在しなかった

⇒ そして、その後は、誰もいなかった
⇒ そして、誰もいなくなった!
⇒ 詳しい英語解説は後半のコラムへ

作品

★『そして誰もいなくなった』のレビュー動画(YouTube)
17秒目で『And Then There Were None』が発音されます。


★BBC制作TVドラマ『そして誰もいなくなった』(2015年)の予告編動画(YouTube)
24秒目で『And Then There Were None』が発音されます。

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コラム

  • “ミステリーの女王”アガサ・クリスティーの代表作。舞台や映画、ドラマなどに、よく翻案されていますね。孤島に集められた10人が、童謡の歌詞内容にあわせて、1人ずつ死んでいき、最終的には誰もいなくなるという“クローズド・サークル(closed circle)”ミステリーの傑作。全員が死んでしまうのなら、いったい誰が何の目的で? という謎に対する答えは、小説を読んでみてのお楽しみ!

    一方、英題と邦題を見くらべると、こんな謎がわいてきます。

    「There Were None」が「誰もいなくなった」に相当するなら、なんで誰もおらへんのに、複数の「Were」を使ってんねん? 複数の亡霊でもおるんかいな? (お~、コワ!)
    この謎を解くカギは、問題の童謡に隠されているようなので、恐る恐る見ていきましょう……。(お~、コワ!)


  • 本作品で、見立て殺人の元となる童謡は、下記のとおり。

    §本書からの原文引用
    Ten little Indian boys went out to dine;
    One choked his little self and then there were nine.
    Nine little Indian boys sat up very late;
    One overslept himself and then there were eight.

    10人のかわいい少年たち 食事に出かけたってさ
    1人が窒息 (えーっ?!) そして9人が残った
    9人のかわいい少年たち 夜更かしをしたってさ
    1人が寝坊 (永遠に?!) そして8人が残った

             (中略)

    Two little Indian boys sitting in the sun;
    One got frizzled up and then there was one.
    One little Indian boy left all alone;
    He went and hanged himself and then there were none.

    2人のかわいい少年たち 日光浴したってさ
    1人が焼け焦げ (えーっ?!) そして1人が残った
    1人のかわいい少年…… ひとりぼっちで寂しいあまり
    自ら首をくくってしまい そして誰もいなくなった
    (飛訳:福光潤)

    逃げだせない孤島で、この歌が現実となるんだから、やはり怖い。

そして、

いきなり「そして(And)」から始まるタイトルって変なの! と感じた方も、先行する文章の存在を知れば頷けるでしょう。

そして、

題名『そして誰もいなくなった』に得も言われぬ余韻があるのは、上記歌詞の最後の部分を抜き出した題名だからなんでしょうね…。


  • そして、ここから本題のタイトル英語解説。

    「none」は、「no」と「one」が合体して作られた単語なので、「誰も~ない」や「何も~ない」といった意味になります。「one」を含んでいることから、単数のイメージが基本です。

    たとえば、「彼らは誰ひとりとして私の友達ではない」を、「none」を使って英訳するなら、2つの英文が考えられます。

    〔正式〕
    None of them is my friend.

    =彼らは誰ひとりとして私の友達ではない

    〔略式〕
    None of them are my friends.

    =彼らのゼロ人が私の友達だ
     ※もともと英語におけるゼロは複数イメージで捉えます。


    正式には「none」が単数扱いであっても、複数人または複数個の話題であれば、動詞や補語が複数につられてしまうのが略式パターン。

    上記童謡も略式パターンとなり、10人(またはゼロ人)という複数につられてしまって、単数のBe動詞「was」ではなく複数のBe動詞「were」になっています。

    There were none (of the ten little Indian boys).

    (10人のかわいい少年たちが)ゼロ人になった
     ⇒誰もいなくなった


    ということで、

    なんで誰もおらへんのに、複数の「Were」を使ってんねん?
    の謎は、これで解けました。いなくなった10人が余韻として残っているから。

    複数の亡霊でもおるんかいな? (お~、コワ!)
    の謎も、これで解けました。いなくなった10人が余韻として残っているのだから。

・


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・


(マジ怖っ!)

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  • ちなみに、童謡『十人のインディアン(Ten Little Indians)』は、「ひ~とり、ふ~たり、さんにんのインディアン♪」などと歌われ、日本でも親しまれてきました。

    しかし、その原曲は、1868年にアメリカで発表された『Ten Little Injuns』で、上記引用のように残酷な歌詞でした。
    ※「Injun」は「Indian」の変形で、ネイティブアメリカン(Native American)の蔑称。
翌1869年にイギリスで翻案されたバージョンが、『Ten Little Nigger Boys』です。
※「Nigger」は「Negro」の変形で、アフリカ系アメリカ人(African American)の蔑称。
このバージョンは、英国古来の伝承童謡を集めた『マザー・グース』に収録され、手元の『マザー・グース 4』(1981年、翻訳者:谷川俊太郎)にも『十にんのニグロのこども』として和訳されています。

そして、

アガサ・クリスティーが英国で本作を発表した1939年当時の原題は『Ten Little Niggers』で、英国版童謡『Ten Little Nigger Boys』をベースに書かれた内容でした(このときの小説邦題は『死人島』)。

10人の黒人が次々と消える内容の歌に基づいた殺人を描く小説に、差別用語「Nigger」を含むタイトルまで付いていると、さすがにアメリカで出版するわけにもいかず、タイトルが差し替わります。

童謡の出だしフレーズから、末尾のフレーズ、つまり、『And Then There Were None』に変更されました。

そして、

イギリス本国でもアメリカにならってタイトル変更。めでたく『And Then There Were None』に落ち着きました!

そして、

作品内の童謡も『Ten Little Indian Boys』が長らく使われていました。

And then (そして、その後)

さらに時代は流れて、「Indian(インディアン)」も差別用語となり、今は『Ten Little Soldier Boys(十人の兵隊さん)』となっています。

そして、

舞台となる孤島の呼び名も、以下のように変遷してきました。
Nigger Island(ニガー島)
↓
Indian Island(インディアン島)
↓
Soldier Island(兵隊島)



  • 孤島名の変遷とえいば、最初の映画化作品『そして誰もいなくなった(And Then There Were None)』(1945年、アメリカ)は、原作どおり、孤島を舞台にしていますが、その後の映画化では、場所を置き換えています。
    • 『姿なき殺人者(Ten Little Indians)』
       (1965年、イギリス)
        …冬の山荘
    • 『そして誰もいなくなった(Ten Little Indians)』
       (1974年、伊・西独・仏・西・英)
        …砂漠
    • 『10人の小さな黒人(Десять негритят)』
       (1987年、ソ連)
        …岬
    • 『サファリ殺人事件(Ten Little Indians)』
       (1989年、イギリス)
        …サバンナ!

And then (そして、その後)

BBC制作TVドラマ『そして誰もいなくなった(And Then There Were None)』(2015年、イギリス)では、ふたたび孤島にもどってきました。


  • いかがでしたか? 本作のタイトル英語にまつわる英文法や歴史の理解が深まり、冒頭で抱いていた怖さが、どこかへ消えちゃいましたね。

    And then there are no mysteries!

    そして謎もなくなった!



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ヒラメキ例文

Agatha Christie's "And Then There Were None" is a great mystery book!

アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』は、最高の推理小説だ!

英題発音へ 視聴ヘルプ 発音ヘルプ



参考外部サイト

※禁断の英文法怪説 by 福光 ⇒

等位接続詞+副詞+Be動詞+代名詞
冒頭の「And Then」は先行文の存在を示唆。「There Were None」の部分は「M+V+S」。

※文法アレルギーの方の目に付かぬよう、コソコソ解説しています(^^;)

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コメント(2件)

福光潤 — 2016年 12月 02日, 20:27

現在、BBC制作ドラマ『そして誰もいなくなった』(2015年)が、NHK BSプレミアムで、毎週日曜21時、全3回で放映中。第1話で兵隊島と兵隊さんの童謡が出てきて「おや?」と思ったので、今回調査に乗り出したというわけです。

実はこのタイトル英語、12年前の2004年9月22日に日刊タイトル英語第10号として配信していたんですが、英語面での解説が【「None」は、「no」と「one」が、合体したものです。】の1行だけだったので(笑)、今回はコラムを思いっきり増量してみました。

あと、前回の原稿からカットした箇所をここに記しておきます。

> 『姿なき殺人者』(1965年)は、冬の山荘、『そして誰もいなくなった』(1974年)は、砂漠、そして、『サファリ殺人事件』(1989年)では、サバンナ!
> 最後のサバンナ版は、劇場で見ましたが、超駄作! 1人ずつ消えていって、怖いよ~、って言うじゃない? でも、アンタ、1分ずつ無駄に時間が消えていく方が怖いですから! 残念!!! 「つまらなさすぎて、逆に思い出に残ってしまう映画」斬り!

今は懐かしいギター侍(波田陽区さん)ネタをパロっていますね(笑)

福光潤 — 2019年 04月 19日, 16:24

当ページ冒頭に、タイトル英語動画をアップしました。
ミステリー風な演出で福光が解説しています。
ぜひご覧ください。

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