執筆:加藤由佳 公開:2016/05/29 コメント(1件) |
邦題
メリー・ポピンズ
ふりがな
めりーぽぴんず
英題
Mary Poppins
発音
メァrぃパっぴんず
メァrぃポっぴんず
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意味
Mary | Poppins |
↓ | ↓ |
メアリー(女子名) | ポピンズ(人名) |
⇒ メアリー・ポピンズ(原作小説の雰囲気)
⇒ メリー・ポピンズ(映画の雰囲気)
⇒ 詳しい英語解説は後半のコラムへ
作品
- 1964年/アメリカ/映画/ディズニー、ミュージカル、ファンタジー、実写アニメ合成、ファミリー
- 監督:ロバート・スティーヴンソン(Robert Stevenson)
- アニメーション監督:ハミルトン・ラスク(Hamilton Luske)
- 原作:パメラ・トラバース(P. L. Travers)
- 出演:ジュリー・アンドリュース(Julie Andrews)、ディック・ヴァン・ダイク(Dick Van Dyke)
- 音楽:ロバート・B・シャーマン(Robert B. Sherman)、リチャード・M・シャーマン(Richard M. Sherman)
- 第37回アカデミー賞5部門(主演女優賞、編集賞、作曲賞、歌曲賞、特殊効果賞)受賞!
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コラム
- まさかの対談企画!? 『メリー・ポピンズ』シリーズ(2016年4月9日から5月29日に配信されたメルマガ第824号~第839号)の締めくくりとして有終の美を飾るのは、人名「Mary Poppins」とその訳し方についての解釈です。せっかくですので福光タイトル仙人×加藤の対談形式に挑戦してみました。
タイトル仙人:久々の登場ですやん(笑) ヨロシク! それと、加藤さん、タイトル英語『メリー・ポピンズ』特集の執筆、お疲れさまでした!
加藤:福光仙人、ご降臨ありがとうございます!
「Mary」は「メリー」? 「マリー」? 「メアリー」?
作品タイトル『Mary Poppins』自体の和訳として、映画版の『メリー・ポピンズ』だけでなく、原作小説の邦訳では『メアリー・ポピンズ』、『メアリ・ポピンズ』、『風にのってきたメアリー・ポピンズ』、『空からきたメアリー・ポピンズ』などいろいろありますね。
ええーー、そんなに? めっちゃあるやん(笑) ほな、ひとつずつ見ていこか。
はい、お願いいたします!
まず映画邦題『メリー・ポピンズ』風に「メリー」と訳すパターンの代表は、『メリーさんの羊(Mary Had a Little Lamb)』やんね。メロディーの関係で、『メアリーさんの羊』は字余りになってボツ。『マリーさんの羊』やと「マーリさんの羊・・・麻里さんの羊?」に聞こえてしまうからアウト。「メリーさんの羊」も実際は「メーリさんの羊」って聞こえるけど、これがいちばん英語の発音に近いから、こう訳されるべく訳されたという感があり。
あと、『メリー・ポピンズ』と同じ英国児童文学作品の『秘密の花園(The Secret Garden)』(『小公女(A Little Princess)』のフランシス・ホジソン・バーネット(Frances Hodgson Burnett)著、中山知子訳)にも「Mary」が登場しますが、「メアリ」と訳されています(1991年第1版発行)。
「メアリ/メアリー」パターンで思い出すのは、昔好きでよく見ていたTVドラマ『大草原の小さな家(Little House on the Prairie)』。主人公ローラが「メアリー姉さ~ん」と呼ぶ吹替音声が脳裏にバシッと焼きついてるわ。原作の邦訳では出版社によって「メリー」も出てくるんやけど、しっくりこーへんなぁ(笑)
『秘密の花園』に戻りますが、中山知子訳より古い訳も子供のころ読んだことがあります。そのときは「メリー」だったかも。
訳された年代によって人名の和訳パターンがどう変化するのか? われわれタイトル英語イストに課せられた今後の研究課題やな。あと、「マリー」については、「ブラッディ・マリー(Bloody Mary)」の由来が面白そうやで。
ブラッディ・マリーとは、トマトジュースとウォッカのカクテルですね。名前の由来は16世紀イングランド女王のメアリー1世。熱心なカトリック教徒であり、数百名にもおよぶプロテスタント教徒を迫害・処刑したために「血まみれのマリー(Bloody Mary)」と呼ばれる。ちなみにエリザベス1世はメアリー1世の異母姉妹。
なんと、そんなに凄い由来やったんか!(←実はあまり知らんかった・笑)
高校世界史の授業内容と、当時父に借りた西ヨーロッパ史の本の内容を思い出しつつ、さらに調べものをしながら書きました。
助かるわ、おおきに。しかしやで、この由来の説明文を理解するにも、「メアリー」と「マリー」の原語が同一語の「Mary」やって知らんと納得しにくいわな。「マリー1世」って聞かへんし。
「マリー」だとどうしてもフランス語の「Marie」を連想してしまうところもありますし。ちなみにブラッディ・マリーそのものを飲んだことは一度もありません。
こちらもトマトジュース苦手やからパス。
トマトジュース風味の霞1年分真空パック入りとか送りつけないようにしようっと・・・多分ね。
大人の無糖スカイオーシャンブレンドKASUMIでよろしく!(笑) それと、「Mary」訳で、もうひとつ。キリスト教では「(聖母)マリア(様)」となるのも覚えておきたい知識。
そう、「メアリー」、「メアリ」、「メリー」、「マリー」すべてのルーツですね。
ちなみに、加藤さん、学生に英語を教えている立場から、「Mary」の入った英文を和訳せよ的な問題に対しては、どれで訳せばええのかな?
「メアリー」が現時点では一番一般的に感じられるので、先にそのように注釈をつけます。ほかの問題(模試など)でもそのパターンが多いのではと思います。あと、女性名であることをしっかり明記しないと、代名詞として「he」をつける生徒も出てきてしまいます。そもそも最近は教科書などで「Mary」を見る機会も減ったかもしれませんね。
「Poppins」は、「ポピンズ」? 「ポッピンズ」?
それでは最後に、姓(family name)の「Poppins」に注目してみましょう。
ローマ字読みやと「ポッピンズ」(「ッ」=「つまる音」入り)になるところ。実際に原語の発音をようく聞いても、「ポピンズ」なのか「ポッピンズ」なのかどっちにも聞こえてしまうので厄介。アメリカ英語発音なら「パピンズ/パッピンズ」説も浮上。どれが正解っちゅうわけでもないんやけど、カタカナ表記は作品の印象や馴染み深さに強い影響を与えるもんやから、作品を紹介する立場の翻訳者や広報担当者は腕の見せどころ。
たしかに、「ポッピンズ」よりも「ポピンズ」のほうが落ち着きがあるイメージですね。「Mary」の和訳にはバラエティーがあるのに、「Poppins」は「ポピンズ」で固定されているのも面白いところです。
米国政治家の「Henry Kissinger」は「ヘンリー・キッシンジャー」(「ッ」入り)で、「キシンジャー」という表記はまれ。逆に米国ミュージシャンの「Kenny Loggins」は「ケニー・ロギンス」(「ッ」無し)で、「ロッギンス」はまれ(ちなみに実際の発音では、末尾の「-ns」は「~ンズ」と濁るけど、そのネタはまたの機会に)。同姓別人のKissingerさんやLogginsさんがメディアに登場すれば、それぞれキッシンジャーさん、ロギンスさんって呼ばれるはず。姓のカタカナ表記は、名(first name)より固定されやすいのかもね。
「Watson(ワトソン、ワトスン)」のように安定しないものもたまにありますが、それでもファーストネームよりは落ち着いていますね。
いわれてみれば、はじめてホームズ翻訳書を読んだとき、「ウォトスン」っていう表記が出てくるたんびに、「それ誰やねん!」ってひとりツッコミしてましたわ。。。じゃ、人名のカタカナ表記ゆれ確率は「名<姓」という結論で!
(笑) ところで、「ポピンズ」という名を冠した幼稚園(?)を見かけたことがあります・・・。
こんど見かけたら園名の由来を聞いてきて!
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