執筆:福光潤 公開:2005/10/21 コメント(2件) |
邦題
世界の中心で愛を叫んだけもの
ふりがな
せかいのちゅうしんであいをさけんだけもの
英題
The Beast That Shouted Love at the Heart of the World
発音
£ぁビーす£ァっシャうでっラーvぁっ£ぁハーrどv£ぁヲァーrおどぅ
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意味
The Beast | That | Shouted | Love | at the Heart | of the World |
↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ |
その獣;獣性を持つ存在 | 直前のものは | ~を叫んだ | 愛 | 中心で | 世界の |
⇒ 世界の中心で愛を叫んだ獣
⇒ 世界の中心から愛の念を放出してしまった暴力装置
⇒ 詳しい英語解説は後半のコラムへ
作品
コラム
- 『世界の中心で愛を叫んだけもの』と聞いて、「あれ? セカチューのタイトルじゃないの?」と思った方も多いと思います。
なので、まずは「セカチュー」ネタから。
「セカチュー」ことベストセラー小説『世界の中心で、愛を叫ぶ』の原作者、片山恭一氏が想定していたのは、もともと『恋するソクラテス』というタイトルだったそうです。
主人公の名前が朔太郎なので、サク→サクラテス→ソクラテス……といったオヤジ発想は入っていないかもしれませんが、この理屈っぽい青年を指すタイトルとして『恋するソクラテス』は秀逸だったと感じます(セカチュー英語版の英題は『Socrates in Love』)。
ところが、感動的な内容の割には『恋するソクラテス』では弱いなぁと感じたのか、編集者の石川和男氏が『世界の中心で、愛を叫ぶ』という印象的な命名をしたとのこと。
そして、柴咲コウが手にとり宣伝したことがきっかけで大ヒット作品に!
なので、「セカチュー」と今回のSF小説『世界の中心で愛を叫んだけもの』とは内容的に縁遠いです。
- では、『世界の中心で愛を叫んだけもの』のあらすじを簡単にいうと……(ネタバレにご注意!)
本作の「中心」とは、都市内部の暴力を外部に吐き出す装置。
世界中でその都市だけが暴力のない理想郷でいられます。
しかし、ある博愛主義者がその装置に飛び込んだところ、装置は外部に「愛」を吐き出し、世界に平和が訪れましたとさ!
そんなプロットを端的かつ詩的に述べた素晴らしい(そしてある意味ネタバレな)タイトルですね。
邦題『世界の中心で愛を叫んだけもの』も英題『The Beast That Shouted Love at the Heart of the World』も、いずれも具体的なイメージを想起させつつ、比喩的であり象徴的でもあるタイトル表現です。
この多重性は、下記の3点に起因すると思います。
- 1.「the beast」の解釈は2通り:
- a. 特定の獣性を持った動物(具体的)
b. 獣性 or 獣性を持つ存在(観念的) - 2. 「shout love」の解釈は2通り:
- a. 愛の言葉(「I love you!」etc.)を叫ぶ(具体的)
b. 愛の念を、広く行きわたらせる(観念的) - 3. 「中心」の英語表現は2通り:
- a. 「center」や「middle」は、図形の端っこから測った長さが同じになる中心(具体的)
b. 「heart」は、町の中心や、物事の核心(観念的)
- このヒューゴー賞作品『世界の中心で愛を叫んだけもの』は、ベトナム戦争泥沼化の1969年に発表されました。
著者のエリスンは、さらに『宇宙大作戦(Star Trek)』の人気エピソード『危険な過去への旅(The City on the Edge of Forever)』(1967年)の脚本でも、ヒューゴー賞を受賞しています。
どちらの作品も、ベトナム戦争を背景に生み出された優秀なSF作品ですので、機会があればぜひお読み&ご覧ください!
- 最後に、世紀をまたいだタイトル伝言ゲームです!
1969年
(人類、月に立つ)
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↓ |
1979年
(金八先生、ドラえもん放映開始)
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↓ |
1996年
(『アジアの純真』でPuffyデビュー)
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↓ |
2001年
(東京ディズニーシー開園→翌週が9/11)
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↓ |
2004年
(アテネオリンピック)
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↓ |
2018年
(米朝史上初首脳会談)
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↓ |
2019年
(令和スタート)
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↓ |
2021年
(ウィズコロナ時代2年目)
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