執筆:福光潤 公開:2005/05/09 コメント(2件) |
邦題
ペイ・フォワード 可能の王国
- 別表記:ペイ・フォワード[可能の王国]
ふりがな
ぺいふぉわーど かのうのおうこく
英題
Pay It Forward
発音
ペいイっフォrをrどぅ
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意味
Pay | It | Forward |
↓ | ↓ | ↓ |
与える、渡す | それを | 次の人に |
⇒ それ(=親切)を、次の(=親切を受けた人とは別の)人に与えよう
⇒ “恩送り”ムーブメント
⇒ 詳しい英語解説は後半のコラムへ
作品
- 1999年/アメリカ/本/小説、ヒューマン、ロマンス
- 邦題:『ペイ・フォワード[可能の王国]』
- 著者:キャサリン・ライアン・ハイド(Catherine Ryan Hyde)
- 翻訳者:法村里絵
- 上記作品の映画化
- 2000年/アメリカ/映画/ヒューマン、ロマンス
- 監督:ミミ・レダー(Mimi Leder)
- 出演:ケヴィン・スペイシー(Kevin Spacey)、ハーレイ・ジョエル・オスメント(Haley Joel Osment)、ヘレン・ハント(Helen Hunt)、ジョン・ボン・ジョヴィ(Jon Bon Jovi)
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コラム
- 原作小説の出版前に、すでにワーナーが映画化を決めていました。
2000年12月に日本語訳が出版され、2001年2月に映画が日本公開。
なので、小説と映画で邦題が統一されていたんだと思いますが、
なぜ邦題で「It」が省略されたのか?
なぜ「可能の王国」なのか?
関係者のみぞ知る、なのでしょうが、そこんところを一緒に考えていきましょう。
- まず、『Pay It Forward』の「It」がなければ、「
Pay Forward」となり英語として意味が成り立ちません。
邦題から「It」が省略されたのは、たぶん語呂の問題です。
『ペイ・イット・フォワード』も『レット・イット・ビー』も似たようなもんだろうけど、「ペイ・イット」が言いにくいねぇ、いっそ「イット」を抜いちゃえっと!
そんな経緯で抜かれたのかと想像できます。
- 「pay」の意味は「(代金、代償、敬意などを)払う」ことです。
超簡単! 超楽勝!
では、今回のタイトルは、どーゆー意味?
翻訳サイトく~ん! 「Pay It Forward」を訳してくださ~い!
◆某翻訳サイトの結果訳文↓
それを前方に支払ってください。
やはり日本語になっていないじゃないですか~、翻訳サイト君……。まあ、前後の文脈がないから仕方がないですよね。
- では、気をとりなおして、今回のタイトル英語の真実に迫ります!
結論から言うと、「Pay It Forward」とは、12歳のトレバー(Trevor)君が社会科の授業で思いついた善行のチェーンメールみたいな呼びかけのことを指しています。
親切を受けたら、それに対する報いを相手に返さずに別の3人に渡し、その3人もそれぞれ別の3人に渡すこと。
そんなふうに善行を末広がりに伝播させる行動メカニズムが「Pay It Forward」です。
§引用(ペーパーバック裏表紙の文章より)
Twelve-year-old Trevor McKinney began to change the world for the better by doing something good for three people.
But instead of paying him back, he asked them to "pay it forward" by doing a favor for three more people, who in turn would help three others, and so on, each act a link in a chain of human kindness.(下線:福光潤)
「pay」が使われている2つの表現だけで要約すると、
「pay him back」の代わりに「pay it forward」せよ!
まず、1つ目の表現「 pay him back 」を見てみましょう。
「him」は「親切をくれた人」です。
『ランダムハウス英語辞典』の「pay」の4番目の定義をあてはめてると、「親切な行いをしてくれた人に対して報いること」となります。
「pay 人 back for 事」=
「人がしてくれた事に対して報いる」
ここでは、「pay him back for "something good"」です。
2つ目の表現は、タイトルの「pay it forward」です。
「it」は「something good=a favor=親切な行為」を指します。
「forward」は、上で翻訳サイト君が言っていたとおり「前方へ」。時間的・空間的な前方であり、「次の代へ」という感じです。
ネットワークビジネスのようなピラミッド型をした組織なら「下の代へ(downward)」に相当しそうですが、ここでは今日受けた親切を明日別の人へ渡すわけです。つまり、
「明日」が時間的な前方、
「別の人へ」が空間的な前方。
ちなみに、動詞「forward」は、Eメール等の「転送」動作を表します。
なので、「pay it forward」の「pay」は「報いる」ではなく単に「与える」。Aさんから受けた恩に対してBさんに報いるのは変ですよね。
『ランダムハウス英語辞典』では5番目の定義にあてはまります。
「pay honor to 人(敬意を人に払う)」のタイプです。
まとめると、
「pay him back」の代わりに「pay it forward」せよ!
=Aさんに報いる代わりに、B・C・Dさんに親切を!
このメカニズムがうまく連鎖すると、またたく間に世界中の人々へ親切の輪が広がり、どんな運動でも可能になりそうですね。
邦題中の「可能の王国」は、そんな先を見越した副題となっています。
- 「pay it forward」は、この作品で作られた造語でありながらも、「pay」と「forward」の正しい語感を持っているネイティブなら、パッと聞いて理解できる表現なんだそうです。
一方、日本語話者が「ペイ・イット・フォワード」と聞いたところで、その言わんとする概念はイメージしにくいものです。
でも、もう安心!
ここまで映画『Pay It Forward』のタイトル英語を見てきたので、わたしたちも「pay it forward」と聞いてパッと理解できるようになりましたね!
- 【追記】
“恩送り”という日本語があることを、図解思考塾のつねさんに教えていただきましたので、上記意味欄に“恩送り”を追加しました。
つねさん、ありがとうございます!
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