執筆:福光潤 公開:2020/09/20 コメント(1件) |
邦題
アンという名の少女
ふりがな
あんというなのしょうじょ
英題
Anne with an E
- 別名:Anne(第1シーズン公開当初の原題)
発音
ェアーん(ぬ)wぃ£ぁニー
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意味
Anne | with | an | E |
↓ | ↓ | ↓ | ↓ |
アン(女子名) | ~の付いた | ひとつの | アルファベットの「E」 |
⇒ 「E」付きの「Anne」
⇒ 綴りに「E」が付いて立派な響きのする「アン」
⇒ 詳しい英語解説は後半のコラムへ
作品
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コラム
- モンゴメリの児童文学『赤毛のアン』(1908年)は、これまでに何度も映像化されてきました。日本では『世界名作劇場』のアニメ版も長年親しまれていますね。
※原作『赤毛のアン(Anne of Green Gables)』のタイトル英語については、こちらの詳しい解説をご覧ください。
今回ご紹介するのは2017~2019年に本国カナダ国営放送CNCと米国Netflixによって共同製作・放映され、国内では2020年9月からNHK地上波で放送スタートしたTVドラマ化作品です。
原作の雰囲気を壊すことなく、イジメや差別、偏見、PTSD、フェミニズムといった現代的な観点から主人公アンの人格形成を描きこんでいる秀作で、美しい風景とともに毎回見るのが楽しみです。
邦題『アンという名の少女』は、原作タイトル『赤毛のアン(Anne of Green Gables)』と同様に主人公名を冠するもの。
一方、原題『Anne with an E』はどうでしょうか?
一見するとアンのお決まりの自己紹介フレーズなので、やはり主人公名をフィーチャーした題名のバリエーションに見えます。
しかし実は、この原題こそが、上記したような主人公の内面にフォーカスしたタイトルとなっているといえます。詳しく見ていきましょう。
- 女性のファーストネーム「アン」は、ふつうに英語で書くと「Ann」です。
「Ann」の愛称バリエーションとしては、「Annie, Nancy, Nanny」などがあります。
「Nancy」が「Ann」の愛称だとは面白いですね。
これに「e」を付けた「Anne」は、まったく同じ発音の「アン」ですが、「Ann」よりも古い形なので重みが感じられると一般的に思われています。
現に、18世紀初頭のイギリス女王「アン女王=Queen Anne」など、女王や王女の名前に「Anne」の表記が多く見られます。
プリンセスであることを夢想する赤毛のアンが「Anne」というスペリングの方を好むのも無理はありません。
マリラとの初対面(Episode 1)でアンが自己紹介する際に「Please call me Cordelia(どうかコーデリアと呼んで)」と頼むのですが、なんじゃそれ?って感じでマリラに本名を問いただされると「My name is Anne. Plain Anne.」としぶしぶ答えます。
「アン」という名前自体が「plain(平凡な、地味な)」だと感じているんですね。
その次の台詞に当該タイトル英語が初登場します。
§台詞引用
Anne: Could you please spell it with an E when you speak it? Anne with an E looks much more distinguished.
Marilla: Very well, then, Anne with an E.
アン:つづりの最後に「E」が付くと思って呼んで。「E」が付くほうが立派に見えるから。
マリラ:じゃあそうしましょう。「E」の付くアン。
孤児であるという出自、赤毛であること、そして地味な名前などにコンプレックスを抱いて一生幸せにはなれないと思っているアンは、せめてもの救いとして「E」付きで名前を覚えてもらいたい。
自己紹介時にそうアピールすることで、自己のアイデンティティーをかろうじて前向きに保っていることが伺えます。
- ところで、自分の名前って、常に人生につきまとう刻印だと思いませんか?
アンほど強く実名を否定する方はあまりいないと思いますが、「あだ名」のような変形ネーミングや「肩書き」といった付随タイトルに良くも悪くも影響を受ける方は多いと思います。
好きなニックネーム(ボクの場合、潤→ジュリアン)で呼ばれてハツラツと過ごしていたのに、新しい学年になったとたん嫌なあだ名(福光→コソ光)を付けられ惨めな日々を過ごすハメになってしまった、そんな経験はありませんか?
社会に出てからは、呼び名に付く肩書きのランクに応じて、上下関係やライバル関係で自分の気分が何気に左右されるようになるものです。
そこで、せめてもの気晴らしとして、現代ならSNSやYouTubeなどで好きな名前を名乗って他人と交流することで、望む自己のアイデンティティーが自然と形成されていくのだと思います。
同じような感覚で、英題『Anne with an E』からは、アン自身の自己逃避(自己防衛)と前向きな姿勢の両面を汲みとることができます。
この英題のおかげで、今後のアンの成長を見守りたくなる気持ちが倍増しますね!
最後に、番組タイトルロゴ画像をご覧ください。英題が木に彫られています。アルファベット「E」が綴り字の一部であることを明確にするために二重引用符("E")が付いていますよ。
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