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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 日刊タイトル英語 2018/11/11 第913号 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 否定界の救世主+長芋 ………………………………………………… 【邦題】 人間失格 【英題】 No Longer Human 【発音】 発音+例文を、音声でどうぞ!→ https://title-eigo.com/Database/NoLongerHuman#Hatsuon
【意味】 もはや人間ではない 【作品】 1948年/日本/本/小説、独白、犯罪、病気 著者:太宰治(Osamu Dazai) 翻訳者:ドナルド・キーン (Donald Keene;1958年) ★ 朗読動画を見る?→ https://title-eigo.com/Database/NoLongerHuman#WatchIt
【コラム】 今回のタイトル英語 『No Longer Human』には、 重要フレーズが入っています! -------------------- no longer = もはや~ない -------------------- はい、 こんどのテストに出るから赤線~! と、いくら学校のセンセに教えて もらっても、わかりません、 覚えられません、使えません! という方、たくさん いらっしゃると思います。 だいいち、「もはや~ない」 という意味自体、ひとことでスパッと 言い切っていないところ、 いさぎよくないというか、 中途半端というか、 「~」に何がくるか予測不能で、 不安を煽り、最終的な和訳は センスにかかっていそうだし、 もはや付き合ってられましぇ~ん! って感じの和訳です。 フクミツも日本語圏で育ったので、 「no なんちゃら」系の表現は、 正直いまだにニガテなんです。 ここで英語表現のことは忘れて、 日本語について こんな事実を思い出しましょう! -------------------- そもそも日本語の否定って、 ありえなくまどろっこしい! -------------------- どういうことかというと、 こんな感じです。 -------------------- 兵庫県教育委員会によれば、 県下の各小学校において、算数の時間に、 ルービックキューブの6面解法を教える ということは、行っていないようである。 -------------------- という例文は、最後の最後に 「~ない」という言葉が出現した瞬間、 いままで積み上げてきた 情報ブロックの塔が瓦解! そんな噂があったのか? 他県では教えているのか? 中高生には教えているのか? 算数以外の時間に教えているのか? 6面でなく1面までなら教えているのか? スネークキューブ(古っ!)なら 教えているのか? こんな疑問が同時多発的に暴発しますが、 そこをグッとこらえ胸中に秘めるのが 我々日本語ネイティブスピーカーの宿命! たぶん自分が知らない時事情報のせいで、 この文に違和感を抱いてるんだろうなぁ と、自己犠牲の本能が働いちゃうのかも! そこで、日本語の否定界における救世主! 「もはや」がさっそうと登場することで、 その文が「~ない」で終わることを予め 約束してくれます! -------------------- 兵庫県教育委員会によれば、もはや、 県下の各小学校において、算数の時間に、 ルービックキューブの6面解法を教える ということは、行っていないようである。 -------------------- 読み手がどうあがいても、 2行目からは否定的なエンディングを 覚悟してしまう! そして、 今回知った否定的な現状よりも、 これまでそんな教育してたの? マジで? という過去の事実への驚きを禁じえない! それほどに「もはや」の登場は衝撃的! この否定界の救世主には 何種類かありますが、 「もはや」は病院における聖職者タイプ! 映画などで、末期症状の患者さんの病室に 牧師さん( or 神父さん、お坊さん)が 顔を出すだけで、アカン、もう終わりや! と、患者は 「生の否定」=「死の宣告」 を覚悟。 文のはじめの方に出てくる「もはや」は、 これまで継続していたことにケリをつけ、 もう終わっている状態を認めさせる標識。 さてと、英語にもどりましょう! “否定界の救世主” などと大げさに考えなくても、 英語では否定フレーズが 前方にあって当たり前! 最後まで読まなきゃという “まどろっこしさ”は、 英文ではあまり考えられません。 -------------------- According to 兵庫県教育委員会, 県下の各小学校 no longer teaches how to solve a ルービックキューブ in 算数の時間. -------------------- 早い段階で、 「どんな教育が廃止されたのか?」と、 後半の読み方を決められるのでスッキリ! そして、そんなもん教えてたの? とビックリ! 「longer」の部分に注目すると、 「long」+「-er」となっています (比較級)。 -------------------- This yam is not longer than that yam. この長芋は、あの長芋ほど長くない。 -------------------- のように、 「-er」には「than 基準」がつきもの。 その基準“より”上か下か、 大か小か、前か後か。 「no longer」についても、 「もはや~ない」 と訳語を覚えるよりも、 基準時点にフォーカス! 上に出てきた日本語 「もはや」の意味合い: -------------------- これまで継続していたことにケリをつけ、 もう終わっている状態を認めさせる標識。 -------------------- の中の、 「ケリ」がついた時点が基準です。 「もはや、その基準より前の状態ではない」 という未練を残した感傷的な文を作るのが、 「no longer」! もはや長芋どころじゃないほど 長いコラムになりつつありますが、 ようやくタイトル英語にもどると、 こうなります。 -------------------- No Longer Human もはや人間ではない -------------------- 先頭に「I am」をおぎなって文にすると、 最後に廃人同然となった主人公“自分” の独白となります。 -------------------- I am no longer human. 自分は、もはや人間ではない。 -------------------- いくら本人がそう悟っても、 以前は人間だったが…、 という文である以上、 やっぱり未練を残す表現です。 じゃ、どの時点から人間では なくなったのだろうか? 少年性的虐待、 アル中、 心中未遂、 モルヒネ中毒、 精神疾患。 いや、そういう表面的な出来事ではなく、 もっと違う次元に、人間でなくなる きっかけがありそうかも…。 などと、 読書中にも想像をかきたてるべく、 ドナルド・キーンさんが狙った 意訳型英題。 それが『No Longer Human』でした! ちなみに、邦題『人間失格』の直訳 (a literal translation of the Japanese title)として、 ペーパーバック裏表紙には、 こう書いてあります。 -------------------- disqualified from being human -------------------- これも、アタマに「I am 」を追加すると、 文になります。 -------------------- I am disqualified from being human. 人間であるという資格を剥奪されています。 ⇒ 自分は人間失格です。 -------------------- そうすると、人間失格にいたるストーリー ではなく、紛争地域を舞台にした人権問題 を扱う社会派小説か、アンドロイド狩りの 近未来SFっぽくなりそうです。 -------------------- オマエ、それなぁ、人間として失格やで、 ホンマにもう(-_-;) -------------------- のように、日本語会話で 「失格」という単語は、 大げさながらも、 おどけた感じで使えますよね。 でも、英会話で 「disqualified」という単語は、 大げさかつ全面否定的なイメージで 厳しいかも! そんな英日間の語感バランスも 考慮してみると、たしかに 「no longer」の方がピッタリです。 最後に、小説本文中に邦題『人間失格』が 登場するのは終盤の1箇所のみ。 -------------------- 人間、失格。 もはや、自分は、完全に、 人間で無くなりました。 Disqualified as a human being. I had now ceased utterly to be a human being. -------------------- 人間であり続ける未来を完全否定した 流麗なる英訳文なり。…詳しくは専用ページをお読みください♪
【ひとこと】 今日は英検の2次面接B日程でした。 受験された方のために合格祈願しています! (福光)
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